嘉数誠教授率いる佐賀大学理工学部の研究チームは、世界で初めてダイヤモンド半導体を使った電子回路を開発しました。この回路は、高速なスイッチングを実現でき、190時間の長時間連続動作でも劣化が見られなかったという素晴らしい性能を発揮しました。
ダイヤモンド半導体とは?
ダイヤモンド半導体とは、ダイヤモンドを半導体材料として使用することで、高速・高耐久性・高電力デバイスを実現する技術です。ダイヤモンドは、非常に硬く耐久性が高く、熱伝導性が優れているため、高温・高圧環境下でも安定して動作することができます。また、ダイヤモンドは、従来の半導体材料に比べて電子の移動度が非常に高いため、高速な電子デバイスの製造に適しています。
ダイヤモンド半導体の特徴
ダイヤモンド半導体の特徴としては、以下のようなものがあります。
高速動作
ダイヤモンドは、電子の移動度が非常に高いため、高速な電子デバイスを実現することができます。これにより、高速スイッチングデバイスや高周波電子デバイスなどの応用が期待されています。
高耐久性
ダイヤモンドは、高い耐熱性と耐圧性を持っているため、高温・高圧環境下でも安定して動作することができます。そのため、高温・高圧環境下でのデバイスなどにも応用されています。
高電力
ダイヤモンドは、高いバンドギャップを持っているため、高電圧をかけたときの耐久性が高く、高電力デバイスにも適しています。これにより、高電力スイッチングデバイスなどの応用が期待されています。
一方、ダイヤモンド半導体の製造技術はまだ十分に確立されておらず、研究が進められています。ダイヤモンドの結晶成長技術やダイヤモンド薄膜の創製技術など、課題は多くありますが、今後の研究によってダイヤモンド半導体の応用範囲は拡大されていくことが期待されています。
ダイヤモンド半導体を使った応用例
例えば、ダイヤモンド半導体を使った応用例として、以下のものがあります。
ハイブリッド集積回路
ダイヤモンド半導体は、高周波数電子デバイスとしての応用に適していることから、ハイブリッド集積回路に使われることがあります。ハイブリッド集積回路とは、複数の半導体素子を組み合わせた回路で、機能的に特定の用途に適した回路を作ることができます。ダイヤモンド半導体を使ったハイブリッド集積回路では、高速・高周波性能に優れた回路を実現することができます。
高速スイッチングデバイス
ダイヤモンド半導体は、電子の移動度が非常に高く、また高電力にも耐えられるため、高速スイッチングデバイスに使われることがあります。例えば、ダイヤモンドを使った高速電力トランジスタでは、高いスイッチング速度と低い消費電力を実現することができます。
生体センサー
ダイヤモンドは、化学的に不活性であるため、生体内に埋め込んでも過剰な反応を起こしません。そのため、生体センサーとして利用されることがあります。例えば、ダイヤモンド半導体を使った生体電気化学センサーでは、生体内の化学物質の濃度を測定することができます。
光学素子
ダイヤモンドは、光学的な特性にも優れています。ダイヤモンド半導体を使った光学素子では、高速・高感度な光検出器や、高速な光スイッチなどが実現されています。
以上のように、ダイヤモンド半導体は、その優れた物理的・化学的特性を生かした様々な応用が期待されています。しかし、その製造技術の確立には、今後も多大な研究が必要とされています。
佐賀大学は、ダイヤモンド半導体を用いたパワー半導体が世界最高の出力電力を記録するなど、関連の研究成果を相次いで発表しており、今回の成果も実用化を早めるうえで非常に重要なものとなります。今後の動向に注目が集まります。